「インフレで預金が目減りする」。ニュースでよく見る言い方です。
でも通帳を開いても、残高は1円も減っていません。
じむにーと減っていないのに目減りするって、どういうことなんでしょう。
この記事では、そこを分けて説明します。投資をしているかどうかは関係なく、銀行に預金がある人なら全員に関わる話です。数字は2026年9月時点で公表されている総務省統計局と日本銀行のデータを使います。
結論:残高は減らない。減るのは「買えるものの量」
100万円を普通預金に置いたとします。1年後も残高は100万円のままで、銀行が勝手に引いたりはしません。
変わるのは値札のほうです。
去年100万円で買えていたものが、今年は101万9千円出さないと買えない。そうなると、手元の100万円で買える量は去年より少なくなります。「インフレで預金が目減りする」とは、残高ではなく値札の側の話です。
この2つを区別するために、こういう言葉が使われます。
| 意味 | |
|---|---|
| 名目 | 額面。通帳に書いてある数字 |
| 実質 | その額面で実際に買える量 |
名目100万円は何年経っても名目100万円ですが、実質のほうは物価が上がるぶんだけ小さくなっていきます。
数字で確かめる
体感ではなく統計で見ます。総務省統計局が毎月出している消費者物価指数(生活に使うモノやサービスの値段をまとめて指数にしたもの)が、いちばん素直な材料です。
2026年9月18日に公表された2026年8月分(全国)です。
| 指標 | 前年同月比 |
|---|---|
| 総合 | +1.9% |
| 生鮮食品を除く総合 | +1.7% |
| 生鮮食品及びエネルギーを除く総合 | +1.9% |
「生鮮食品を除く総合」は、天候で値段が跳ねやすい野菜や魚を外したもので、物価の基調を見るときによく使われます。
直近1年の総合の動きは、2025年12月が+2.1%、2026年2月に+1.3%まで鈍り、7月と8月はどちらも+1.9%でした。
効いてくるのは、積み上がったとき
1年ぶんだと「その程度か」と感じるかもしれません。
2020年平均を100としたとき、2025年平均の総合指数は111.9でした。5年で11.9%上がったということです。
これを金額に直します。
2020年に100万円ぶんの買い物 → 2025年の値段では 111万9千円かかる
2020年から100万円を預金に置いたまま → 2025年の値段では 約89万4千円ぶんしか買えない
100万円 ÷ 1.119 ≒ 89万3,655円
じむにーと残高は100万円のまま。でも買える量は10万6千円ぶん減っています。
実質で見るというのは、こういうことです。
なお2026年の夏から、指数の基準年が2020年から2025年に変わりました。基準年が違う指数の水準そのものは直接比べられませんが、前年同月比や前年比は比べられます。
じむにーと5年で1割。1年ずつ見ていると気づきにくい大きさです。
預金の金利と並べてみる
「でも、金利がつくのでは」と思った方もいるはずです。ここも実際の数字で見ます。
日本銀行の統計では、普通預金の平均金利(店頭表示)の推移はこうなっています。
| 時点 | 普通預金の平均金利 |
|---|---|
| 2022年4月 | 0.002% |
| 2024年4月 | 0.019% |
| 2025年4月 | 0.182% |
| 2026年9月 | 0.322% |
ほとんどゼロだった頃から見れば、はっきり上がっています。定期預金(預入金額1千万円以上・1年)でも2026年9月は0.472%です。
そのうえで、物価の上がり方と並べます。
| 金額 | |
|---|---|
| 100万円を普通預金に1年(利息・税引前) | 3,220円 |
| − 税金(20.315%) | 654円 |
| 手取りの利息 | 約2,566円 |
預貯金の利息には20.315%の税金がかかります(所得税および復興特別所得税15.315%+住民税5%)。
一方、直近と同じ+1.9%のペースで物価が1年進んだと仮定すると、去年100万円だった買い物カゴは101万9千円になります。
100万2,566円 ÷ 1.019 ≒ 98万3,872円
1年で約1万6千円ぶん、買える量が減る計算です。
これは将来の予想ではありません。直近の数字がそのまま1年続いたら、という前提を置いただけの試算です。物価も金利も、この先どう動くかは分かりません。
つまり、金利は上がったものの、今のところ物価の上がり方のほうが速い。その差のぶんだけ、預金の実質は小さくなっていきます。
預金のままでいいお金、考える余地があるお金
インフレの数字を見ると、預金を全部どこかへ移したくなるかもしれません。でも預金には、目減りと引き換えにしても手放しにくい役割があります。
手元のお金を、役割で3つに分けてみてください。
| 中身 | どうするか | |
|---|---|---|
| ① 生活防衛資金 | 失業や病気で収入が止まったときのお金 | 預金のまま |
| ② 使う時期が見えているお金 | 来年の税金、3年後の車検、家電の買い替え | 預金のまま |
| ③ それ以外 | 当面使う予定がなく、口座に置きっぱなし | 考える余地がある |
①を動かしてはいけない理由
必要になったその日に、全額引き出せること。この性質には、年1%台の目減りと引き換えにできない価値があります。
目減りを嫌って動かした結果、いざというときに手が出せないほうが困ります。金額の決め方は生活防衛資金はいくら必要?にまとめました。
②も動かさない
値動きするところに置くと、必要な日に足りない可能性が出てきます。使う時期が決まっているお金は、金額が変わらないことのほうが大事です。
③だけが検討対象
インフレの影響をいちばん長く受けるのはこのお金で、どうするかを考える価値があるのもここだけです。
じむにーと置き場所を変える前に、預金に置く量の決め方を見直す。順番はこちらが先です。
それでも、慌てて何かを買う話ではありません
ここまで読んで「じゃあ預金から出さないと」と感じたなら、いったん止まってください。この記事で扱うのは、仕組みの説明までです。
何かを変えるとしたら、置き場所より先に、預金に置く量の決め方を見直すのが自然な順番です。
使わずに残ったぶんがそのまま預金に積み上がっていく形だと、どこまでが必要なお金なのかが見えません。①と②の合計を先に決めて、それを超えたぶんを別に考える。 この順番で線を引くと、判断はかなり楽になります。
じむにーとこまめに見直して動かす前提の管理は、忙しい時期が来ると止まります。一度決めた金額を年に1回見直すくらいが、無理がありません。
超えたぶんを具体的にどうするかは、この記事では扱いません。焦って知らないものに手を出すと、インフレより速く減ることもあります。
まずは預金を「防衛資金」「使い道が決まっているお金」「それ以外」の3つに分けてみるところからで十分だと思います。
まとめ
- 預金の残高は減らない。減るのは、その金額で買えるものの量(名目と実質の違い)
- 2026年8月の消費者物価指数は前年同月比 +1.9%。2020年平均から2025年平均までは 11.9%上昇
- 2020年から100万円を預金に置いたままなら、2025年の値段では 約89万4千円ぶんの買い物
- 普通預金の平均金利は2026年9月で年0.322%。金利は上がったが、今のところ物価の上がり方のほうが速い
- 生活防衛資金と、使う時期が決まっているお金は預金のままでいい。考える余地があるのは、当面使わないお金だけ
次に読む
- 投資が怖い人へ|なぜ必要と言われるのかをグラフで解説 物価に加えて、手取りと年金の変化もグラフで並べ、怖さを小さくする始め方をまとめています
- 生活防衛資金はいくら必要?|最初の入金まで2〜3か月の空白がある 「預金のままでいい①」の金額を、自分の数字で計算する手順です
- 保険は何のためにある?|貯蓄で払える損失に保険はいらない 固定費を見直すと、③に回せるお金が増えます
- お金の基礎まとめ|投資を始める前に知っておく7つのこと この記事を含む7本を、読む順番に並べています
参考(一次ソース)
いずれも2026年9月18日に確認しました。
- 総務省統計局「2025年基準 消費者物価指数 全国 2026年(令和8年)8月分」(2026年9月18日公表) https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/zenkoku.pdf
- 総務省統計局「消費者物価指数(CPI) 全国(最新の月次結果の概要)」 https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.html
- 総務省統計局「消費者物価指数(CPI) 全国(最新の年平均結果の概要)」2025年平均(2026年1月23日公表) https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/nen/index-z.html
- 日本銀行「預金種類別店頭表示金利の平均年利率等」時系列統計データ(2026年9月18日更新) https://www.stat-search.boj.or.jp/ssi/mtshtml/ir02_m_1.html
- 国税庁 タックスアンサー No.1310「利息を受け取ったとき(利子所得)」(令和8年4月1日現在の法令等) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1310.htm
本記事は情報提供を目的としたもので、特定の金融商品の取得や売却をすすめるものではありません。税金の取り扱いは個別の事情で変わります。詳細は国税庁または税理士にご確認ください。
