もし明日から働けなくなったら、毎月いくら入ってくるか答えられますか。
じむにーと考えたこともなかったです。ゼロではない、とは思うのですが。
給与明細から毎月引かれている社会保険料は、その「働けなくなったとき」に備える保障の代金です。では、実際にいくら出るのか。
この記事では、病気・障害・死亡・失業といった場面ごとに金額を出します。そのうえで、いまの手取りと比べていくら足りないのかまで引き算します。そこが分かると、民間の保険で備えるべき額が見えてきます。
制度の数字は2026年9月時点、年金額は2026年度のものです。
協会けんぽと厚生年金に加入している会社員/標準報酬月額30万円(月給30万円・賞与なし)/手取りは約24万円。
金額はすべてこの条件での概算です。実際の額は加入期間・収入・家族構成で変わります。
結論:おおよそ「半分」までは公的保障が出る
先に答えを書きます。働けなくなったときや亡くなったときに公的保障で出るのは、手取りのおよそ5〜8割です。病気で休む最初の1年半は約8割、障害・遺族・老後は5〜6割ほどです。ゼロではありませんが、全部でもありません。
「保険に入らなくても国が何とかしてくれる」も、「保険がないと路頭に迷う」も、どちらも言いすぎです。正解はその間にあります。足りない分だけを民間の保険や貯蓄で埋める、という考え方になります。
場面ごとの一覧
| どんなとき | どの保険から | いくら(概算) |
|---|---|---|
| 医療費がかかった | 健康保険(高額療養費) | 窓口3割。医療費100万円の月でも自己負担は約9.3万円 |
| 病気・けがで働けない | 健康保険(傷病手当金) | 1日約6,667円 = 月約20万円(通算1年6か月まで) |
| 障害が残った | 障害基礎年金+障害厚生年金 | 2級で年約134万円、1級で年約168万円、3級は年63万5,500円 |
| 亡くなった | 遺族基礎年金+遺族厚生年金 | 子が1人いる配偶者で年約146万円 |
| 介護が必要になった | 介護保険 | 費用の1〜3割負担でサービスを利用できる |
| 失業した | 雇用保険(基本手当) | 1日約6,307円 = 月約19万円(90〜330日) |
| 出産した | 健康保険 | 一時金50万円+出産手当金 約65万円 |
| 育児休業をとった | 雇用保険 | 賃金の67% = 月約20万円(181日目から50%) |
| 老後 | 老齢基礎年金+老齢厚生年金 | 40年加入で年約164万円(月約13.6万円) |
で、いくら足りないのか
ここからが本題です。上の金額を月額に直して、手取り24万円と比べます。
| 場面 | 公的保障(月額) | 手取り24万円との差 |
|---|---|---|
| 病気で働けない(最初の1年半) | 約20万円 | 約4万円 不足 |
| 障害2級になった | 約11.2万円 | 約12.8万円 不足 |
| 亡くなった(子1人の配偶者) | 約12.2万円 | 約11.8万円 不足 |
| 失業した | 約19万円 | 約5万円 不足(+期限あり) |
| 老後(40年加入) | 約13.6万円 | 約10.4万円 不足 |
じむにーとこの引き算をしないまま保険に入ると、要らない保障に払い続けることになります。
この「不足」の列が、民間の保険や貯蓄で埋める候補です。ただし、病気で働けないときの「約4万円」には続きがあります。
病気で働けないときの3つの落とし穴
落とし穴1:傷病手当金をもらっている間も、社会保険料と住民税は払う
傷病手当金の月約20万円は、そのまま手元に残りません。
| 金額 | |
|---|---|
| 傷病手当金 | 約20万円 |
| − 社会保険料(休職中も発生する。雇用保険料は給料が出ないのでかからない) | 約4.3万円 |
| − 住民税(前年の所得に対して課税される。年収360万円の場合) | 約1.25万円 |
| 実質の手残り | 約14.5万円 |
じむにーと休んでいる間も、社会保険料と住民税の請求は止まりません。
傷病手当金そのものは非課税なので所得税はかかりません。しかし社会保険料は免除されません。産休・育休は免除されますが、病気は対象外です。給与から天引きできないので、会社へ振り込むなどして自分で払うことになります。住民税も前年の所得にかかるので、収入が止まっても請求は来ます。
結果、手取り24万円に対して実質の不足は月約9.5万円。18か月続けば、累計で約170万円になります。これが「生活防衛資金をいくら持つか」を考えるときの、ひとつの根拠になります。
落とし穴2:1年6か月で切れる
傷病手当金には期限があります。通算1年6か月です。その先は、障害等級に該当するかどうかで大きく分かれます。
| 発症からの経過 | 受け取れるもの |
|---|---|
| 〜1年6か月 | 傷病手当金(月約20万円) |
| 1年6か月以降・障害等級に該当する | 障害年金(2級で月約11.2万円) |
| 1年6か月以降・該当しない | なし |
じむにーと働けるほどではないのに、障害等級にも当たらない。この谷間が一番きついところです。
怖いのは3行目です。働けるほどではないけれど障害等級にも当たらない、という状態がありえます。そこには公的な給付がありません。民間の就業不能保険が想定しているのは、主にこの領域です。
落とし穴3:高額療養費で守られない費用がある
高額療養費は強力な制度ですが、対象外の費用があります。差額ベッド代(個室・少人数部屋を希望した場合)、入院中の食事代、先進医療の技術料です。
医療費100万円の月でも自己負担が約9.3万円で済むのは、あくまで保険が適用される診療分の話です。
障害・死亡の年金は「家族構成」で大きく変わる
ここは金額の差が大きいので、自分の場合を必ず確認してください。
障害年金
障害基礎年金は2026年度で1級が年105万9,125円、2級が年84万7,300円。厚生年金に入っていれば障害厚生年金が上乗せされます。
上乗せ分は「平均標準報酬額 × 5.481/1000 × 加入月数」で、加入期間が300月(25年)未満なら300月とみなして計算されます。若くして障害を負っても最低限の水準が確保される仕組みです。
この例では 30万円 × 5.481/1000 × 300月 = 年約49万円。2級なら基礎年金と合わせて年約134万円です。
遺族年金
遺族基礎年金は年84万7,300円に、子1人目・2人目が各24万3,800円加算されます。ここでの「子」は18歳になった年度の3月31日まで(障害等級1・2級なら20歳未満)。
注意すべきは、子がいない配偶者には遺族基礎年金が出ないことです。子が18歳の年度末を過ぎた場合も同様に止まります。
遺族厚生年金は報酬比例部分の4分の3で、この例では年約37万円。子が1人いる配偶者なら、合計で年約146万円になります。
なお遺族厚生年金は2028年4月から見直される予定です(子のない配偶者の給付期間など)。18歳年度末までの子がいる配偶者は、その子が18歳年度末になるまで現行制度のままとされています。
失業・出産・育児
失業したときの基本手当は、離職前6か月の賃金から計算する「賃金日額」のおよそ5〜8割。賃金が低い人ほど率が高くなります。この例では賃金日額1万円で、1日約6,307円。給付日数は離職理由・年齢・加入期間によって90〜330日と幅があります。
出産では、出産育児一時金が1児50万円(産科医療補償制度に未加入の医療機関などでは48.8万円)。会社員なら、休んだ期間に出産手当金も出ます。
育児休業給付は賃金の67%で、181日目からは50%。両親がともに育児休業を取る場合などは、出生後休業支援給付13%が最大28日分上乗せされ、合わせて80%になります。
仕事中のけがは労災、自営業は数字が変わる
仕事中・通勤中のけがや病気は、健康保険ではなく労災保険が担います。労災保険料は会社が全額負担するので、給与明細の控除欄には出てきません。
また、この記事の数字は会社員の場合です。
| 会社員 | 自営業・フリーランス | |
|---|---|---|
| 病気で働けないとき | 傷病手当金あり | 原則なし(国民健康保険では法定給付ではない) |
| 障害・遺族・老後 | 基礎年金+厚生年金 | 基礎年金のみ(上乗せなし) |
| 仕事中のけが | 労災保険 | 原則なし(特別加入制度あり) |
自営業は公的保障の穴が大きいぶん、民間の保険や貯蓄で備える必要性が高くなります。
自分の数字を確かめる方法
この記事の金額はモデルケースです。自分の場合は次で確認できます。
| 知りたいもの | 確認先 |
|---|---|
| 障害年金・遺族年金・老齢年金の見込み額 | ねんきん定期便/ねんきんネット |
| 傷病手当金・高額療養費の詳細 | 加入している健康保険(協会けんぽ/健保組合)のサイト |
| 失業給付の日数と金額 | ハローワーク |
| 自分の標準報酬月額 | 給与明細、または健康保険の資格情報 |
じむにーとねんきん定期便を見るだけで、かなり具体的な数字が分かります。
確認したら、この記事の表の「不足」の列を自分の数字で埋め直してみてください。そこが民間の保険を検討する出発点になります。
まとめ
- 社会保険料の見返りは、病気・障害・死亡・介護・失業・出産・育児・老後の各場面で出る
- 標準報酬月額30万円なら、働けないとき月約20万円、障害2級で年約134万円、子1人の配偶者への遺族年金で年約146万円(2026年9月時点・年金額は2026年度)
- 傷病手当金をもらっている間も、社会保険料と住民税は払う。実質の手残りは月約14.5万円
- 傷病手当金は1年6か月で切れる。その先は障害等級に該当するかどうかで大きく分かれる
- 高額療養費は強力だが、差額ベッド代・食事代・先進医療は対象外
- 自営業は傷病手当金も厚生年金の上乗せもないぶん、穴が大きい
- 民間の保険で備えるのは、公的な給付で足りない部分だけ
実際に受け取れる額や条件は、加入状況や家族構成によって変わります。個別のケースは、加入している健康保険・年金事務所・ハローワークにご確認ください。
次に読む
- 給与明細の控除欄の見方|月給30万円で引かれる44,145円の内訳 この記事で出てきた「社会保険料 約4.4万円」の内訳です。何にいくら払っているかが分かります
- 所得税と住民税の違い|2年目の6月に手取りが減る理由 傷病手当金をもらっている間も払う住民税が、なぜ収入ゼロでも請求されるのかを説明しています
- お金の基礎まとめ|投資を始める前に知っておく7つのこと この記事を含む7本を、読む順番に並べています
参考(一次ソース)
すべて2026年9月18日に確認しました。
- 全国健康保険協会「高額療養費」(70歳未満の自己負担限度額) https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/high_cost_medical_expenses/002/index.html
- 全国健康保険協会「医療費が高額になりそうなとき」(差額ベッド代・食事負担は対象外) https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g6/cat620/r306/
- 全国健康保険協会「傷病手当金」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/injury_and_sickness_allowance/index.html
- 全国健康保険協会「出産手当金」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/childbirth/001/index.html
- 全国健康保険協会「子どもが生まれたとき(出産育児一時金)」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g6/cat620/r310/
- 厚生労働省「医療費の一部負担(自己負担)割合について」 https://www.mhlw.go.jp/content/000937919.pdf
- 厚生労働省「先進医療の概要について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/sensiniryo/index.html
- 日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」 https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/kojin/2026/202604/0401.html
- 日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」 https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/jukyu-yoken/20150514.html
- 日本年金機構「障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額」 https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/jukyu-yoken/20150401-02.html
- 日本年金機構「報酬比例部分」 https://www.nenkin.go.jp/service/yougo/hagyo/hoshuhirei.html
- 日本年金機構「遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)」 https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/izokunenkin/jukyu-yoken/20150401-04.html
- 日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」 https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/izokunenkin/jukyu-yoken/20150424.html
- 厚生労働省「遺族厚生年金の見直しについて」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00020.html
- 日本年金機構「老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額」 https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/roureinenkin/jukyu-yoken/20150401-02.html
- 厚生労働省「介護保険制度について(40歳になられた方へ)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001564291.pdf
- 厚生労働省「雇用保険の基本手当日額の変更(8月1日から実施)」 https://www.mhlw.go.jp/content/11607000/001729233.pdf
- ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」 https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_benefitdays.html
- 厚生労働省「Q&A~育児休業等給付~」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000158500.html
- 厚生労働省「労働保険とは」(労災保険分は全額事業主負担) https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/hoken/tokusetusaito/about.html
- 厚生労働省「国民健康保険制度の概要」 https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/kokumin_nenpou01.pdf
