医療保険に入るべきか。いま入っているものを続けるべきか。
じむにーとみんな入っているし、なんとなく必要な気はするんですが。
この判断が難しいのは、比べる相手が見えていないからだと思います。
私たちは全員、すでに公的な医療保険に入っています。会社員や公務員なら健康保険、自営業やフリーランスなら国民健康保険。その中身を知らないまま民間の医療保険を検討すると、すでに守られている場所をもう一度守ることになりかねません。
この記事では、公的医療保険が入院や手術のときにどこまで効くのかを金額で出し、そのうえで埋まらない部分を並べます。要る・要らないの結論は書きません。決めるのはあなたなので、材料と確認の順番だけ置いておきます。
制度の数字は2026年9月時点で、厚生労働省と協会けんぽの資料を確認したものです。
結論:医療費100万円でも、窓口の負担は約9万3千円
先に答えを書きます。標準報酬月額28万〜50万円の会社員が、1か月で100万円の医療費がかかる治療を受けた場合、最終的な自己負担は92,940円です。
| 金額 | |
|---|---|
| かかった医療費 | 1,000,000円 |
| 窓口でいったん払う(3割) | 300,000円 |
| 高額療養費の上限 | 92,940円 |
| あとで戻ってくる | 207,060円 |
上限額の計算式はこうです。
85,800円 +(1,000,000円 − 286,000円)× 1% = 92,940円
じむにーと30万円が9万3千円。思っていたより公的保険が効いています。
これが、民間の医療保険を考えるときの出発点です。
窓口で払っているのは、かかった医療費の一部
病院で払う金額は、かかった医療費の全額ではありません。年齢によって割合が決まっています。
| 年齢 | 窓口負担 |
|---|---|
| 義務教育就学前 | 2割 |
| 義務教育就学後〜70歳未満 | 3割 |
| 70〜74歳 | 2割(現役並み所得者は3割) |
| 75歳以上 | 1割(一定以上の所得は2割、現役並み所得者は3割) |
働いている世代なら3割。残りの7割は、すでに公的医療保険が払っています。
1か月の自己負担には上限がある(高額療養費制度)
3割といっても、大きな手術や長い入院なら金額は膨らみます。医療費が300万円かかれば、3割でも90万円です。
そこで効くのが高額療養費制度です。1か月(月初から月末まで)の窓口負担が一定額を超えたとき、超えた分が戻ってきます。
70歳未満・協会けんぽの場合、上限額は所得で決まります(2026年9月時点)。
| 標準報酬月額 | 1か月の上限額 |
|---|---|
| 83万円以上 | 270,300円+(総医療費 − 901,000円)×1% |
| 53万〜79万円 | 179,100円+(総医療費 − 597,000円)×1% |
| 28万〜50万円 | 85,800円+(総医療費 − 286,000円)×1% |
| 26万円以下 | 61,500円 |
| 住民税非課税 | 36,900円 |
標準報酬月額は給与の額をもとに決まる区分です。給与明細や保険者からの通知で確認できます(給与明細の控除欄の見方でも触れています)。
治療が長引くと、4か月目からさらに下がる
直近12か月のうち高額療養費に該当した月が3回以上あると、4か月目からは上限額がさらに下がります。「多数回該当」という仕組みです。
28万〜50万円の区分なら、4か月目以降は 44,400円。治療が長引くほど月あたりの負担は軽くなる設計になっています。
2026年8月から年単位の上限もできた
月ごとの上限に加えて、年単位の上限が入りました。8月から翌年7月までの1年で自己負担が積み上がり、年間上限に達したあとは、それ以上の分が還付されます。
| 標準報酬月額 | 年間上限 |
|---|---|
| 83万円以上 | 168万円 |
| 53万〜79万円 | 111万円 |
| 28万〜50万円 | 53万円 |
| 26万円以下 | 53万円 |
| 住民税非課税 | 29万円 |
この見直しでは月ごとの上限額も引き上げられましたが、長く治療を続ける人に配慮して多数回該当の金額は据え置かれました。
2027年8月からは第2段階の見直しが予定されていて、所得区分がさらに細かく分かれます。実際に使うときは、加入先のページで最新の額を確認してください。
窓口での立て替えを避ける方法
高額療養費は、いったん払ってから戻ってくるのが基本です。ただ事前に手続きをすれば、窓口での支払いを最初から上限額までにとどめられます。
- マイナ保険証(健康保険証として登録したマイナンバーカード)が使える医療機関なら、提示するだけ
- 使えない場合は「限度額適用認定証」を保険者に申請し、資格確認書と一緒に窓口へ
じむにーと入院が決まったら、まずこれ。30万円の立て替えが不要になります。
なお上限額は医療機関ごと・1か月ごとに見ます。70歳未満は、1つの医療機関での自己負担が21,000円以上のときだけ合算できます。
働けない間の収入もカバーされる(会社員・公務員)
医療費とは別に、入院が長引けば収入も止まります。家計にはこちらのほうが重いこともあります。
会社員や公務員の健康保険には傷病手当金があります。
| 内容 | |
|---|---|
| 対象 | 業務外の病気やケガで仕事に就けないこと(仕事中・通勤中は労災保険) |
| 待期 | 連続する3日間を休んだあと、4日目以降 |
| 金額 | 標準報酬月額の平均 ÷ 30 × 2/3(月給のおよそ3分の2) |
| 期間 | 支給開始日から通算1年6か月 |
ただし公的保障はいくらもらえる?働けないとき月20万円と、足りない9.5万円で計算したとおり、傷病手当金をもらっている間も、社会保険料と住民税の支払いは続きます。月20万円出ても実質の手残りは約14.5万円です。
自営業・フリーランスは前提が違います。 国民健康保険では傷病手当金は「行うことができる」給付で、法律で義務づけられていません。働けない期間の収入はそのまま止まる前提で考えたほうが安全です。
じむにーと公的保険が効くのは、あくまで保険が使える診療の範囲までです。
それでも公的では埋まらない部分
ここが民間の保険を検討する範囲です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 差額ベッド代 | 個室や少人数の部屋を希望した場合。高額療養費の対象外。金額は病院による |
| 入院中の食事代 | 一般の人で1食550円(2026年6月1日から)。1日3食で1,650円 |
| 先進医療の技術料 | 診察・検査・入院料は保険診療と同じ扱いだが、先進医療の費用は全額自己負担 |
| 収入減の残り | 傷病手当金があっても月給の約3分の1は減る。1年6か月を超えた先も対象外 |
| その他の実費 | 通院の交通費、家族の付き添い、保険が効かない装具など |
1か月入院したら、実際いくらかかるか
上の項目を足して計算してみます。標準報酬月額28万〜50万円・医療費100万円・30日入院のケースです。
| 大部屋 | 個室(1日5,000円) | |
|---|---|---|
| 高額療養費後の自己負担 | 92,940円 | 92,940円 |
| 食事代(1,650円 × 30日) | 49,500円 | 49,500円 |
| 差額ベッド代 | 0円 | 150,000円 |
| 合計 | 約14万円 | 約29万円 |
じむにーと差額ベッド代を入れるかどうかで、倍以上変わります。ここが判断の分かれ目です。
大部屋なら約14万円。生活防衛資金はいくら必要?を3か月分(月18万円なら54万円)持っていれば、貯蓄で受け止められる金額です。
個室を希望するなら約29万円。それでも54万円の範囲には収まります。
考え方の一例:先に現金、足りない部分を保険で
保険の話は「入院日額がいくら」から始まりがちです。その前に順番を1つ入れる考え方があります。
まず現金を厚めに置く。 目安は、月の上限額の3か月分と、収入が減ったときの当面の生活費。これがあれば短期の入院は貯蓄で受け止められます。そのうえで、受け止めきれない部分だけを民間の保険で埋める。
これは1つの考え方で、正解ではありません。貯蓄が少ない時期なら保険の役割は大きくなりますし、傷病手当金を当てにしにくい自営業ならもっと大きくなります。どこで線を引くかは、あなたの家計次第です。
あなたがやること
- 自分の加入先を確認する … 協会けんぽか、健康保険組合か、共済組合か、国民健康保険か。傷病手当金があるかどうかがここで決まります
- 自分の上限額の区分を調べる … 給与明細で標準報酬月額を確認し、加入先のページで最新の上限額を当てはめます
- 働けない間にいくら入るかを見る … 会社員なら月給のおよそ3分の2、自営業ならいったんゼロで。会社独自の休職制度や上乗せ給付がないか、就業規則も確認を
- 貯蓄でどこまで受け止められるかを出す … 上限額の3か月分+収入が減ったときの生活費を、いま現金で持てているか
- 残った隙間を書き出し、いま入っている保険と突き合わせる … 保障内容は保険証券や約款に書いてあります
契約の内容は商品ごとに違いますし、公的保障の扱いも加入先によって差があります。細かいところは保険者や保険会社の書面で確かめてください。
まとめ
- 窓口負担は年齢で決まり、70歳未満は3割。残りの7割はすでに公的医療保険が払っている
- 1か月の自己負担には上限がある。標準報酬月額28万〜50万円なら、医療費100万円の月で 92,940円
- 治療が長引くと4か月目から 44,400円 に下がる。2026年8月からは年単位の上限も入った
- 会社員なら傷病手当金で月給のおよそ3分の2が通算1年6か月まで。国民健康保険では、この給付があるとは限らない
- 埋まらないのは差額ベッド代・食事代・先進医療の技術料・収入減の残り
- 1か月入院の実額は、大部屋で約14万円、個室で約29万円
民間の保険を考えるのは、この隙間を書き出したあとです。
次に読む
- 保険料の平均はいくら?|30代の生命保険料と見直すと浮く金額 自分の保険料が平均と比べて高いかどうかと、見直すと年いくら浮くかの計算です
- 保険は何のためにある?|貯蓄で払える損失に保険はいらない そもそも保険がどんな場面のための道具なのか。判断の物差しを1本お渡しします
- 生活防衛資金はいくら必要?|最初の入金まで2〜3か月の空白がある 「まず現金を厚めに置く」の、その金額を自分で計算する手順です
- お金の基礎まとめ|投資を始める前に知っておく7つのこと この記事を含む7本を、読む順番に並べています
参考(一次ソース)
いずれも2026年9月18日に確認しました。
- 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/juuyou/kougakuiryou/index.html
- 厚生労働省「(参考)高額療養費制度の見直しについて」 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001661792.pdf
- 厚生労働省「医療保険制度改正法が成立しました」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/newpage_00014.html
- 厚生労働省「医療費の一部負担(自己負担)割合について」 https://www.mhlw.go.jp/content/000937919.pdf
- 厚生労働省「先進医療の概要について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/sensiniryo/index.html
- 厚生労働省「保険外併用療養費制度について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/sensiniryo/index_00007.html
- 厚生労働省「国民健康保険制度の概要」 https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/kokumin_nenpou01.pdf
- 全国健康保険協会「高額療養費」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/high_cost_medical_expenses/002/index.html
- 全国健康保険協会「医療費が高額になりそうなとき(限度額適用認定証等)」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g6/cat620/r306/
- 全国健康保険協会「傷病手当金」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/injury_and_sickness_allowance/index.html
- 全国健康保険協会「入院時食事療養費・入院時生活療養費ほか」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/mynumber_insurance_card/002/index.html
- 全国健康保険協会「【制度改正】令和8年8月から高額療養費制度が見直されます」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/about/business/public_relations/009/002/index.html
