新卒1年目の給与明細に、住民税の行がなかったことを覚えていますか。
あれは記載漏れではありません。1年目は住民税がかからないからです。そして2年目の6月、昇給したばかりのタイミングで、いきなり引かれ始めます。
じむにーと同じ所得にかかる税金なのに、どうして所得税と住民税で扱いが違うんだろう。
給与明細の控除欄には、所得税と住民税が並んでいます。違いはいろいろありますが、実生活で効いてくるのは1つだけです。
この記事では、その1つを軸に、知らないと困る場面と備え方まで書きます。年収300万円で実際に金額も計算します。
制度の数字は2026年9月時点で確認したものです。会社員を想定しています。
結論:住民税は「去年のあなた」にかかっている
覚えるべきはこれだけです。所得税は今年の所得にかかり、毎月の給与から引かれて年末調整で精算されます。住民税は去年の所得にかかり、今年6月から来年5月までの12回に分けて引かれます。
つまり、いま明細に載っている住民税は、去年のあなたの稼ぎに対する請求書です。
収入が毎年だいたい同じなら、このズレは目立ちません。去年の分を今年払っても金額が変わらないからです。困るのは、収入や働き方が変わった年。そこだけ押さえておけば十分です。
2つを並べて比べる
| 所得税 | 住民税 | |
|---|---|---|
| 納める先 | 国(国税) | 市区町村と都道府県(地方税) |
| どの年の所得にかかるか | その年の1〜12月 | 前年の1〜12月 |
| 税率 | 5〜45%の7段階(累進)+復興特別所得税2.1% | 所得割が一律10%+均等割 |
| 引かれ方 | 毎月の給与から源泉徴収 → 年末調整で精算 | 6月〜翌年5月の12回で天引き |
| 誰が税額を計算するか | 会社(または確定申告で本人) | 市区町村 |
税率のかかり方も対照的です。所得税は稼ぐほど税率が上がる累進で5%から45%の7段階。対して住民税の所得割は、所得の大小にかかわらず一律10%(市町村民税6%・道府県民税4%)です。
これに定額の均等割が乗ります。標準は市町村民税3,000円・道府県民税1,000円で、令和6年度からは森林環境税1,000円もあわせて徴収されています。合わせて年5,000円です。
そして意外と知られていないのが、税額を計算する主体が違うことです。所得税は会社が計算して引きますが、住民税は市区町村が計算した金額を、会社はただ引いて納めているだけ。だから会社に「住民税を安くして」と言っても何もできません。
なぜ6月始まりなのか
住民税は、その年の1月1日に住んでいる市区町村で、前年の所得をもとに課税されます。会社員の場合、こういう流れです。
- 1月末まで … 会社が前年の給与額を市区町村に報告する(給与支払報告書)
- 5月31日まで … 市区町村が税額を計算し、会社へ通知する(特別徴収税額決定通知書)
- 6月から翌年5月 … 会社が毎月の給与から引いて納める
じむにーと6月始まりなのは、役所の事務スケジュールの都合だったんですね。
1月末の報告を受けて市区町村が計算し、5月末に通知する。この事務のスケジュールがあるから、天引きは6月開始になっています。
年収300万円で計算してみる
具体的な金額を出します。年収300万円・扶養家族なし・40歳未満のケースです。
| 手順 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 給与収入 | 3,000,000円 | |
| − 給与所得控除 | 300万 × 30% + 8万 | 980,000円 |
| = 給与所得 | 2,020,000円 | |
| − 社会保険料控除 | 月38,048円 × 12か月 | 456,576円 |
| − 基礎控除(住民税) | 430,000円 | |
| = 課税所得 | 1,000円未満は切り捨て | 1,133,000円 |
| 所得割 | 課税所得 × 10% | 113,300円 |
| − 調整控除 | 所得税との基礎控除の差5万円 × 5% | 2,500円 |
| = 所得割(端数処理後) | 市と県それぞれ100円未満を切り捨て | 110,700円 |
| + 均等割 | 市町村3,000+道府県1,000+森林環境税1,000 | 5,000円 |
| 住民税 年額 | 115,700円 |
月あたり9,600円です(6月だけ端数が乗って10,100円)。
扶養家族なし・各種控除は基礎控除と社会保険料控除のみで計算しています。社会保険料は協会けんぽ(東京)の令和7年度の料率で、月25万円を標準報酬月額の等級(26万円)に当てはめた本人負担(健康保険12,883円・厚生年金23,790円・雇用保険1,375円)です。賞与なしとしています。均等割は自治体によって上乗せがある場合があります。
なお、2025年度の税制改正で給与所得控除の最低保障額が65万円に引き上げられましたが、これは給与収入190万円以下が対象です。年収300万円は従来どおりの計算になります。住民税の基礎控除43万円も据え置きです(2026年9月時点)。
この「年115,700円・月9,600円」という数字が、次の話で効いてきます。
1年のズレが表に出る3つの場面
場面1:社会人2年目の6月
新入社員の1年目、給与から引かれる税金は所得税だけです。前年に所得がないので住民税がかかりません。住民税の天引きが始まるのは、2年目の6月から。
つまり、年収300万円なら2年目の6月に、手取りが月1万円近く(9,600円)減ります。昇給した直後にもかかわらず、です。
ただし新卒の場合、1年目に給与をもらったのは4〜12月の9か月だけなので、2年目の住民税はこれより少なめで、3年目にもう一段増えます。初任給別の金額は、後半の「社会人2年目の住民税はいつから・いくら引かれる?」で出しています。
1年目の手取りを基準に家賃や固定費を決めると、2年目に苦しくなります。「2年目の6月から月1万円近く減る」前提で組んでおくのが安全です。
場面2:退職・転職した年
会社を辞めると、給与から住民税を引けなくなります。残りの扱いは辞める時期で変わります。
| 退職時期 | 残りの住民税の扱い |
|---|---|
| 1月1日〜4月30日 | 5月31日までに支払われる給与や退職金が残額を超えるなら、申し出がなくても一括徴収される |
| 6月1日〜12月31日 | 原則普通徴収(納税通知書で自分で納める)に切り替わる。申し出れば退職金等から一括徴収も可能 |
| すぐ転職する場合 | 手続きをすれば、転職先で天引きを継続できる |
さらに見落としやすいのが翌年度分です。辞めた年の所得に対する住民税が、翌年またやってきます。年収300万円(月9,600円・年115,700円)のケースで、何月に辞めるといくら必要になるかを出してみます。翌年度分は、辞めた年の所得が前の年と同じくらいだった場合の目安です。
| 退職月 | 今年度の残り | + 翌年度分(目安) | 用意しておく目安 |
|---|---|---|---|
| 6月末 | 11ヶ月 = 105,600円 | 115,700円 | 約22万円 |
| 9月末 | 8ヶ月 = 76,800円 | 115,700円 | 約19万円 |
| 12月末 | 5ヶ月 = 48,000円 | 115,700円 | 約16万円 |
| 3月末 | 2ヶ月 = 19,200円 | 115,700円 | 約13万円 |
じむにーとここを知らずに辞めて、翌年の請求で慌てる人がとても多いです。
辞める前に、給与明細の住民税の月額を確認してください。「月額 × 残り月数 + 翌年度の見込み」が、取っておくべき額です。翌年度分は、収入が途絶えた状態で請求が来ます。ここを見込んでいないと、貯金を崩す想定が1年ズレます。
場面3:収入が下がった年
育休・休職・独立などで収入が下がっても、その年の住民税は前年の高かった頃の所得で計算されています。
給与が出なくなると会社から天引きできないので、市区町村への届け出を経て普通徴収などに切り替わります。独立した場合は自分で納めることになります。
収入が下がると分かっているなら、下がる前に住民税の年額を確認し、その分を別に取り分けておくのが確実です。
社会人2年目の住民税はいつから・いくら引かれる?|初任給別の目安
4月に新卒で入社した場合、住民税の天引きが始まるのは2年目の6月からです。1年目に引かれないのは、場面1で書いたとおり、前年(学生だった年)の所得がないからです。学生時代のアルバイト収入が多かった人(東京23区などで年110万円超。2024年分までの収入なら100万円超)は、1年目から住民税がかかることもあります。
2年目の6月から引かれるのは、1年目の1〜12月の所得にかかる住民税です。ただ、4月入社なら1年目に給与をもらったのは4〜12月の9か月だけ。2年目の住民税は9か月分の給与で計算されていて、12か月分がそろう3年目の6月に、もう一段増えます。2025年4月入社の人で並べるとこうなります。
| 住民税が引かれる期間 | 何年度の住民税か | 基準になる所得 | |
|---|---|---|---|
| 1年目 | なし | ― | 前年(学生時代)の所得がない |
| 2年目 | 2026年6月〜2027年5月 | 令和8年度 | 1年目(2025年4〜12月)の9か月分 |
| 3年目 | 2027年6月〜2028年5月 | 令和9年度 | 2年目(2026年1〜12月)の12か月分 |
これを初任給別に計算しました。月額は7月〜翌年5月の天引き額で、6月だけは端数が乗って数百円高くなります。
| 初任給(月給) | 2年目 年額 | 2年目 月額 | 3年目 年額 | 3年目 月額 |
|---|---|---|---|---|
| 20万円(1年目の年収180万円) | 48,000円 | 4,000円 | 84,100円 | 7,000円 |
| 22万円(1年目の年収198万円) | 61,000円 | 5,000円 | 97,500円 | 8,100円 |
| 25万円(1年目の年収225万円) | 74,500円 | 6,200円 | 115,600円 | 9,600円 |
| 28万円(1年目の年収252万円) | 90,800円 | 7,500円 | 137,200円 | 11,400円 |
前提は、2025年4月入社・独身・40歳未満・東京23区などに住む会社員で、賞与なし・昇給なし(月給は通勤手当を除く額面)、入社前のアルバイト収入なしです。社会保険料は協会けんぽ(東京)の料率で、月給を標準報酬月額の等級に当てはめて計算しました(1年目=2025年に引かれた分は令和7年度、2年目=2026年に引かれた分は令和8年度の料率)。控除の引き方は上の年収300万円の計算と同じで、自治体が公開している計算方法どおりに計算しています。3年目の分は令和9年度の給与所得控除(最低74万円)で試算しましたが、この表の年収では控除の改正による差は出ません(2026年9月時点)。
初任給25万円なら、2年目は月6,200円、3年目は月9,600円です。住民税が増えるのは2年目の6月だけではありません。初任給のままでも、3年目の6月にさらに月3,400円ほど手取りが減る計算になります。昇給や賞与があれば、その分だけ上乗せされます。
表は賞与を入れていません。1年目の冬のボーナスや、2年目の夏・冬のボーナスも給与収入に入るので、ボーナスが出る会社ならその分だけ多くなります。ボーナスを含めた年収が分かれば、年収別の早見表をまとめた年収200万の住民税はいくら?で月額の目安を確認できます。
2026年4月に入社した人は、2年目の住民税が令和9年度(2027年6月から)の分になります。給与所得控除の最低額が74万円に上がるため、同じ前提(社会保険料は令和8年度の料率)で初任給20万円なら年39,000円・月3,200円、22万円なら年54,300円・月4,500円と少し下がります。25万円は上の表と同じ年74,500円、28万円は年90,700円(月7,500円)でほぼ同じです。
医療費控除とふるさと納税は「2か所・別タイミング」で効く
ここも誤解が多いところです。所得税と住民税の両方を減らす手続きは、効果が2か所に分かれ、しかも時期がずれます。
医療費控除
年末調整では受けられず、確定申告が必要です。
| いつ効くか | |
|---|---|
| 所得税 | 確定申告後、払いすぎた分が還付される |
| 住民税 | 翌年度6月からの住民税が減る |
確定申告書を出せば住民税の申告もしたとみなされるので、市区町村への別の手続きは不要です。
ふるさと納税
| 申告方法 | 所得税 | 住民税 |
|---|---|---|
| 確定申告 | 寄附した年の分から控除 | 翌年度分から控除 |
| ワンストップ特例 | 控除なし | その分も含めて翌年度分からまとめて控除 |
両方をやる年は注意してください。ワンストップ特例を申請していても、医療費控除などで確定申告をすると、ワンストップ特例は無効になります。その場合、確定申告の中でふるさと納税の寄附金も申告し直す必要があります。これを忘れると、寄附したのに控除されないという事故になります。
じむにーと還付額だけ見て「少ない」と判断しないこと。半分は翌年の住民税で返ってきます。
効果を確かめるときは、所得税の還付額だけでなく、翌年6月からの住民税の月額が下がっているかも見てください。
今日やっておくと楽になること
- 最新の給与明細で住民税の月額を確認し、12をかける(年額の目安が出ます)
- 退職・休職・独立の予定があるなら、「月額 × 残り月数 + 翌年度分」を見積もって先に取り分けておく
- ワンストップ特例を申請していて、医療費控除などで確定申告をする予定があるなら、確定申告にふるさと納税の寄附金も入れる
1番で出した年額は、今年6月から来年5月までに引かれる住民税です。退職や休職で自分で納めることになったときも、この数字から残額を見積もれます。
まとめ
- 所得税は今年の所得、住民税は前年の所得にかかる。実生活で効くのはこの違いだけ
- 住民税は市区町村が計算し、会社は引いて納めるだけ。税率は所得割一律10%+均等割
- 年収300万円なら住民税は年115,700円・月9,600円(独身・40歳未満・2026年9月時点)
- 社会人2年目の6月に手取りが減る。1年目の手取りで固定費を組まない
- 退職時は「残り月数+翌年度分」が必要。9月末退職なら約19万円の目安
- 医療費控除・ふるさと納税は所得税と翌年度の住民税の2か所に分かれて効く。ワンストップ特例は確定申告で無効になる
ここに書いたのは一般的な仕組みです。実際の税額や、確定申告が必要かどうかは人によって変わります。詳しくは国税庁、お住まいの市区町村、税理士にご確認ください。
次に読む
- 給与明細の控除欄の見方|月給30万円で引かれる44,145円の内訳 控除欄に並ぶ社会保険料と税金の各行を、月給30万円の例で分解しています
- 公的保障はいくらもらえる?働けないとき月20万円と、足りない9.5万円 税金と違い、社会保険料には見返りがあります。いくら出るのかを金額で出しました
- 年収200万の住民税はいくら?|月額と年収別の早見表 年収150万〜300万円の住民税を、独身と扶養1人で早見表にしました。自分の年収の月額が分かります
- 社会保険料はいくら引かれる?|年収200万〜1000万の早見表 手取りを減らしているのは、住民税より社会保険料のほうが大きい額です。年収別の金額を早見表にしました
- 年収300万の手取りはいくら?|月約20万円の内訳と貯められる額 この記事と同じ年収300万円で、社会保険料・所得税・住民税を全部引いた手取りを出しています
- お金の基礎まとめ|投資を始める前に知っておく7つのこと この記事を含む7本を、読む順番に並べています
じむにーと控除欄の7行が全部分かれば、給与明細を見るのが少し楽しくなります。
参考(一次ソース)
すべて2026年9月18日に確認しました(税制改正の適用範囲のみ2026年9月22日に再確認)。
- 国税庁「No.1000 所得税のしくみ」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1000.htm
- 国税庁「No.2260 所得税の税率」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
- 国税庁「No.2662 年末調整のしかた」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2662.htm
- 国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」 https://www.nta.go.jp/users/gensen/2025kiso/index.htm
- 国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120.htm
- 総務省「個人住民税」資料(所得割・均等割の標準税率、森林環境税) https://www.soumu.go.jp/main_content/001005155.pdf
- 総務省「ふるさと納税のしくみ|税金の控除について」 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/mechanism/deduction.html
- 総務省「ワンストップ特例を申請する皆様へ」 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/file/20160818.pdf
- 東京都主税局「個人住民税と特別徴収について」 https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/kazei/life/kojin_ju/tokubetsu/about
- 東京都主税局「特別徴収にかかる手続きについて」 https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/kazei/life/kojin_ju/tokubetsu/tetsuzuki
- 東京都主税局「新社会人の皆さんへ」 https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/scene/agenda/newemployees
- 大阪市「退職・転勤などがあった場合(給与所得者異動届出書の提出)」 https://www.city.osaka.lg.jp/zaisei/page/0000098571.html
- 横浜市「納税の方法」 https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/koseki-zei-hoken/zeikin/y-shizei/kojin-shiminzei-kenminzei/kojin-shiminzei-shosai/shinkokunouzei.html
「社会人2年目の住民税」の節で使った次の4件は、2026年9月29日に確認しました。
- 東京都主税局「個人住民税」(税率・均等割・調整控除・非課税基準・令和9年度の給与所得控除74万円) https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/kazei/life/kojin_ju
- 中野区「住民税の具体的な計算例」(令和8年度の計算例・人的控除差) https://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/kurashi/zeikin/jyuminzei-kazei/jyuminzei-keisanrei.html
- 財務省「令和8年度税制改正の大綱の概要」(給与所得控除の最低保障額・個人住民税は令和9年度分から) https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/08taikou_gaiyou.pdf
- 地方税法 第20条の4の2第6項(特別徴収の月割りの端数は最初の月に合算) https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226
